蓼科山の見える丘
【蓼科山の見える丘/御牧ヶ原】 画像クリック(拡大)
尾崎喜八著 『たてしなの歌』 より 1934
―― 丘の上は晴朗な風と日光との舞台だった。 北方には絵のような御牧ガ原の丘陵を前にして、噴煙をのせた浅間から烏帽子へつらなる連山の歯形。 南にはその美しい円頂と肩とを前衛に、奥へ奥へと八ヶ岳まで深まりつづく蓼科火山群と、豊饒の佐久平をわずかに隠したその緩やかな裾。 さらに西の方にはきらきら光る逆光につかった半透明の美ヶ原溶岩台地、そして東は遠く淡青いヘイズの奥に蛍石をならべたような物見・荒船の国境連山と、其処に大平野の存在を想わせる特別な空の色。 それは晴れやかな、はろばろとした憂鬱な、火山山地の歌であった。
(9 February 2023 長野県東御市御牧原 南部)
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