上信国境にて
【上信国境の牧場/神津牧場】 画像クリック(拡大)
この牧場は明治20年(1887)開設の日本最初の洋式牧場という。
この山上の牧場を初めて訪れたのは昭和46年(1971年)の6月であった。 牧場は霧に閉ざされ雨の底にしずんでいた。 霧の中に白熱燈が点っていた。 古い山小屋風の建物があって、お婆さんがひとり、ジャージー牛のミルクやバターを売ったりなどしていた。 ―― 深い霧と温かなミルク、遠い日の山歩きの記憶である。
大島亮吉著 『 山 随想 (荒船と神津牧場附近 1918年)』 より
ひろい、山上のゆるやかな傾斜地のやや凹んだなかに、眼の下とおく、ちいさく、黒ずんで、ひとかたまりに牧場の小さな建物が、静かに平和に、つつましやかに見えた。建物の硝子窓がキラリキラリと夕日に光ったりなどした。小さく、黒い人の姿が、その建物のぐるりに動いていた。 私は、笹原に深く腰を下ろしたまま、この山上の牧場の、エキゾチックな、全く私の心をとらえてしまった風景に見とれた。
(20 October 2021 群馬県甘楽郡下仁田町南野牧 神津牧場)
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