ボジャ猫(Felis silvestris catus)
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今日もやって来ました、ボジャ猫様。
「 イエイ! 」
おれ、傍若無人猫、略してボジャ猫様だ。 三ヶ月ほど前のことだが、すずめを追っかけて、この木をかけ上がり、枝先から大ジャ~ンプ、一気に蒼山庵とやらの屋根に跳び移った…… まではよかったのだが、屋根から覗いた下の、その余りの高さに足が震えて下りられなくなってしまった。
夕方になっても誰も気づいてはくれなかった。 声はかすれて出なくなった。 そして、氷点下の暗い夜がやってきて、そしてまた幾晩か過ぎていった。 朝になると、瓦に光る霜の滴を舐めた。 何日経ったのだろう、寒くて、腹ペコで、目が廻り、やがて意識が薄れ段々遠のいていった。
気がつくと、辺り一面花が咲いている。 真青な空が広がっている。 遠くに伝説のマタタビの森が見えた。 「ファ~ 遂に俺は死んじまったのか」 と思った。 涙が出てきた。 その時だ、 「アッ あんな所にいる!」 遠くで人の声がしたような気がした。 人間たちがわいわい集まってきたようだった。 ガタンと梯子が掛けられ、大きな手が伸びてきた。 首ねっこを掴まれ、なんともまぁ情けない姿で地上に下ろされたって次第だ。
人間たちは、猫飯にガツガツ顔を突っ込む吾輩に向かって、「ドジだねえ、五日も……」、「それでも猫か……」、 「日頃の傍若無人振りが裏目に出たねえ、あっはっは」、 「これで少しは、おとなしくなるかも……」 などと、散々の言い様であった。
感謝はしているが、このままでは猫の沽券にかかわるってもんだ。 悔しさもあって、時々、木に登ってみるのだが、屋根へ跳び移る勇気は未だない。 人目があり、そのままスゴスゴと下りるわけにもいかないから、格好をつけて途中から 「イエイ!」 と叫んで、飛び下りるのである。 猫にだって、うまくいかないことがあるってわけさ。
(29 June 2017 長野県小諸市 自宅にて)
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コメント
蒼山庵さん
このお話、実話ですか?
ドキドキハラハラしながら読みました。
伝説のマタタビの森がみえたときには
もうダメなの~
無事で良かったです、ボジャ猫くん
とても面白くて、まるで童話を読んでいるようでした
九州では豪雨被害で本当にお気の毒ですが
こちらは猛暑の上に水不足、
蒼山庵さんも奥様も熱中症など注意されて下さいね
毎晩アップされるのを楽しみに待っています
投稿: ヨピ | 2017年7月10日 (月) 11:39
ヨピ様
ご照会のボジャ猫のことは、蒼山庵日誌に、短く次のように書いてありました。
3月8日(水)晴れ
――― 行方不明だった、前の家の猫が、わが家の屋根の上で発見される。 五日目とのこと。みんなで梯子をかけて救出、ボロボロの状態。 栃の木から上がったか? そういえば、深夜、小さな鳴声を聞いたような気がする。
猛暑の夏、健康に留意され、みなさまもソナさまもお元気にお過ごしください。
ボジャ猫拝
投稿: 蒼山庵 | 2017年7月10日 (月) 20:18