書架(2)
【やまねこ/読書の森】 画像クリック(拡大)
おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。 とびどぐもたないでくなさい。 山ねこ 拝
こんなのです。字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらいでした。 けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。 はがきをそっと学校のかばんにしまって、うちじゅうとんだりはねたりしました。
ね床にもぐってからも、やまねこの ”にゃあ” とした顔や、そのめんどうだという裁判のけしきなどを考えて、おそくまでねむりませんでした。
(宮沢賢治著 『 どんぐりと山猫 』 より)
(Photo : 9 September 2013 長野県小諸市 御牧ヶ原 「茶房 読書の森」にて)
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