雪国
【雪国】
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。
信号所に汽車が止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓
を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように
「 駅長さあん 駅長さあん 」
明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は、襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛
皮を垂れていた。
もうそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と
散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。
(川端康成著 『雪国』より)
川端康成著『雪国』ですが、今も読まずにおります。 冒頭にながれる静謐な叙情が
すべてをもの語るかのような、そんな想いがあるのです。
(フォトスケッチ : 平成21年7月5日 新潟県南魚沼郡 越後湯沢にて)
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